種間雑種 ユキワリツマキチョウ



クモマツマキチョウとツマキチョウとの種間雑種は、野外における自然の雑種
として得た卵から、1968年に羽化した♂であったとTS氏が記載しており、
 これが最初の記載であると心得ている。 (「昆虫と自然」 1971、Vol.6 No.1 記載)

本種は田淵行男氏の「高山蝶」にも示唆する一節があるが、写真で示された上記「昆虫と
自然」の一文を初めて読んだ当時、大きな衝撃を受けたものだ。
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更に、同誌には、人工での種間雑種を作り出す操作(ハンドペアリング)にて、自然雑交体
と同様な個体を羽化させた報文をON氏によって記載している。
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それから40年余り経った今春、幸いにも材料としての両種をタイミングよく揃える機会に
恵まれ、ハンドペアリング操作で交尾、産卵、孵化、蛹化を経て、羽化に至る結果を得た。

孵化率、蛹化率、羽化率共かなりの低率であり、蛹は全く休眠をせず、それでもいくつか
幸いにもにも成虫体で姿を現してくれた。 (♂のみで♀は羽化しない)
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                             Breed : Masuda Katsuhiro


本ページは、交尾から羽化までの経過を写真で綴った記録である




交 尾 2009.04.10.

♂:ツマキチョウ(群馬県太田市)+♀:クモマツマキチョウ(長野県大町市)
  交尾時間 : AM11:50〜PM12:08(13分間) 19℃ 半日陰下)



産卵後 有精卵 孵化

2009.04.12. 産卵2日目にオレンジ色になる
2009.04.16. 孵化
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        有精卵                        孵化直前の卵:頭部が黒く透ける
孵化直後(1令幼虫)



幼 虫

2009.04.28. 4令に成長
2009.05.03. 5令に成長

産卵から幼虫の摂食はタネツケバナで行う



蛹 化

2009.05.05. 前蛹から蛹へ
前蛹                    蛹化脱皮中                       



羽化直前の蛹 そして羽化へ

2009.05.19.(直前蛹)  同 05.21.羽化 
頭部複眼 触覚 翅文様/色等が透けて見える 


                 羽化後、翅伸展中               頭胸部まで露出したが脱出できず             



羽 化  2009.05.21.

ユキワリツマキチョウ 羽化第一号
  

自然が作り出した造形、それは神のみぞ知る領域、またはある種の芸術の領域かもしれぬ

人間の手指の加担を受けた人工のハイブリッド体ではあるが、目前で広げるこの翅
の形、色、斑紋の位置等その姿は、筆舌も及ばない不思議な雰囲気を醸している




頭の中で夢を追い続けてきたユキワリの姿
40年目に現実のものとして目の前に現した

敏捷に、羽化した室内空間を飛び回る



ムシトリナデシコに止まり裏面は逆光に翅色や斑紋が透過する



2009.05.21. ユキワリツマキチョウ 羽化第二号
  

続いて羽化した第二号の個体 ミヤコグサの花弁で静止


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総 括

  ユキワリツマキチョウ飼育経過
          
2009.04.10.〜2009.05.21.

000親蝶:(♀) クモマツマキチョウ (長野県大町市産)
   000 (♂) ツマキチョウ     (群馬県太田市産)
交尾

ハンドペアリング強制交尾
  2009.04.10.
  11:50〜12:08
      気温:20℃
 卵(4/12)  51卵 0孵化(4/16) 40頭
   孵化率 : 78.4%
05令(5/3) 19頭
00生存率 : 37.3%
0蛹(5/5) 15頭
0蛹化率 : 29.4%
羽化♂(5/21) 2頭
00羽化率 : 3.9%

羽化したHybrid成虫体   ユキワリツマキチョウ        2009.05.21.羽化

 第1号羽化成虫 ♂
表面

 
 裏面

 第2号羽化成虫 ♂
横面






ユキワリツマキチョウ・追飼育 2014年創出記録


 交尾      2014.04.13. Am11:15〜12:20 (30minute) 21℃    


♂ : 群馬県太田市只上八幡河原野生個体
     ♀ : 
長野県大町市産  累代飼育個体    oooooo



  羽化            2014.06.19. 2exs.♂   2014.06.20. 1exs.♂







飼育概略                                       

・ 4/13 : 産卵(10卵)     4/15〜5/3 幼虫→蛹 :8蛹化

        ・ 温度処理 5/4〜5/8 常温 → 5/19〜6/2 冷蔵5℃ → 6/3〜6/18 常温


* 羽化率は蛹より42.8%、卵より27.3%にあたり、今回追飼育では好成績を得た





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